読み物
2025.12.13
久米村時代の年中行事(旧十一月の行事 )
行事の少なかった十月を過ぎ、久米村の暮らしは静かに霜月(シムチチ)を迎えます。
お年寄りたちは「お盆も昨日、一昨日のように思えるのに、もう十一月か」と語り合い、「チチェー ウマノ ハイ ンリ イチ ヤー」と、時の早さに溜息まじりに語り、月日の移ろいを噛みしめました。
冬至の日を迎え、年末に向けた久米村の様子をご紹介します。
トゥンジージューシー(冬至の雑炊)
冬至の日には、粉ふきにした田芋(ターンム)を入れたシシジュウシー(肉入り雑炊)を、霊前に供えました。
十月はこれといった行事や節日(シチビ)もなかっただけに、この日の雑炊はひときわ美味しく感じられたといいます。
南国とはいえ、十一月ともなると空気は澄み、お腹も自然と減る頃合いでした。
雑炊を食べては外へ遊びに出て、しばらくすると戻ってきて、また食べる。そんな子どもたちの様子を見て、祖母は笑いながら「トゥンジ テー カミ カミ(飛び出して行っては、また食べる)」から、トゥンジージューシーという名がついたのだと話してくれました。
古老の話によれば、冬至は「冬至元日」と呼ばれ、王城では荘重な儀式が行われる節日(シチビ)であったといいます。しかし大正の頃には、そうした儀式の面影は薄れ、冬至雑炊の風習に、その名残をとどめるのみとなっていました。
行事の少ない霜月(シムチチ)の久米村は、冬至の雑炊を味わいながら、来る年末へと思いを向ける。そんな穏やかな月でした。