2025.03.08
久米村の年中行事(二月の行事)
立春を迎え、久米村にも春の気配が訪れる2月。
この時期、村では新たな一年の恵みを祈り、祖先や家族への感謝を込めた行事が行われます。
久米村の伝統行事には、長い歴史の中で培われた風習や祈りが息づいており、
それぞれに深い意味が込められています。
今回は、二月の行事をご紹介します。
丁御祭り(ヒノトオマツリ)と孔子祭り(クーシーウマチー)
二月の久米村では、孔子を祀る大きな行事「孔子祭り」が行われます。この祭りは、二月の最初の丁(ヒノト)の日に行われるため「丁御祭り」とも呼ばれます。琉球王府時代には国の祭りとされ、国の予算の一部として計上されていた歴史がありました。古い記録である「御財政」によると、久米村に関係する孔子廟や啓聖廟、天妃宮、龍王殿、関帝王の祭祀費用として、米三十石四斗一升五合余が記録されています。
現在は、久米崇聖会がこの祭祀を主催し、伝統を受け継いでいます。
また、この時期は県立中等学校の入学試験シーズンと重なるため、久米村の年長者たちは試験をかつての科挙(コー)になぞらえて語ります。中でも「試験場へ向かう途中で植桶や肥桶を担いでいる者に出会うと幸先が良い」といった験担ぎの話が伝えられています。これは、中国の夢占いにおいて、棺や糞尿の夢が官位や財産の獲得を意味することに由来していると考えられます。
屋敷の拝み
二月は、屋敷の拝みを行う月とされています。吉日を選び、御霊前や火の神に屋敷の拝みを執り行うことを案内した上で、屋敷の四隅、中心(ナカジン)、厠、井戸、門を拝み、家内安全を祈願します。
お供え物としては、以下のものが準備されます。
- 瓶子(ビンシー)(お酒、盃、お米、御香)
- 重箱(豚肉、昆布、大根、カマボコ、コンニャク、ゴボウなどの煮しめ)
- 饅頭
- 白紙三枚
- 御香十二本
久米村では、一本だけの線香は縁起が悪いものとされ、必ず複数本まとめて焚く習慣があります。女性は主に「ファーウコー」(島内産の平らな御香)を使い、男性は「竹芯御香」や「プーサーウコー」(特に大きな竹芯御香)を使用します。これらの御香には、それぞれ特定の用途があり、祈願の際には適切なものを選んで使用します。
守神の御祭り
久米村では、多くの家庭で守神(お観音、関帝王、文昌帝君、天妃菩薩、土帝君など)を信仰しています。これらの守護神は、二月十八日、十九日、二十三日のいずれかの日に例祭を行います。
この日は一家眷属が集まり、戸主が祭主となります。
お供え物が用意され、厳かに祀られます。
- 果物
- 菓子
- 甘庶(カンショ)
- 鰻頭
- 御酒
- お茶湯
- 燭
- 御香
お観音信仰は、明代から続くもので、特に浙江・福建地方で庶民の間に根付いています。観音菩薩の聖誕日は二月十九日とされ、この日に特別な祈りが捧げられます。
関帝王は商売繁盛を祈願する武財神として崇められ、特に商家で篤く信仰されています。文昌帝君は学問の神として科挙(コー)のある年には特に信仰されました。
天妃菩薩は船の安全を守る神として、福建・広東地方で多くの船乗りに信仰されており、久米村でも旅行の守護神として祭られています。
土帝君は土地の守護神であり、中国ではどの村にも必ず土神祠があります。久米村でも数軒の家庭で信仰されており、祭祀は二月二日に行われます。
ウンチャビ(御彼岸の祭り)
御彼岸の祭り(ウンチャビ)は他の地域と大きく変わりませんが、いくつかの特徴があります。
お供え物には、
- 香
- 燭
- 酒
- 紙銭(ウチカビ)
- マーミナ粉(キナ粉をまぶした餅)
が含まれます。 また、「ンブシー」と呼ばれる料理が供えられます。
ンブシーの主な具材:
- 豚肉
- かまぼこ
- カステラ
- 昆布
- 大根
- 揚げ豆腐
- 田芋
- コンニャク
この料理は、味噌を濃いめに溶いて炊きあげたものを大皿に盛り、餅を添えてお供えします。拝礼の際には、紙銭を焼いて祈りを捧げます。
紙銭(ウチカビ)
紙銭の風習は、中国から伝来したものとされ、亡者への贈り物として墓前で焼かれます。久米村では、紙銭は主に男性が準備し、福州から輸入された紙を使用して作られます。
紙銭は適当な大きさに折りたたみ、鉄製の穴あき銭の型を金属でたたいてウチカビにします。この心のこもった手作りのウチカビは、祖先を敬う大切な習慣として今も続いています。
二月の久米村では、孔子祭りや屋敷の拝み、守神の祭り、御彼岸など、さまざまな行事が行われます。これらの行事には、祖先を敬い、家族の繁栄を願う久米村の人々の深い信仰心が込められています。